康徳 〜ヤスノリ〜
未だ幼き頃の記憶
円熟しきってくたびれかけている昭和の集合団地は、すごく狭かったけど、一家4人、水入らずの楽しい瞬間を過ごしていた、束の間の土曜の夜。
夕飯を食べ終えてからは、家族団欒の時間はどんどん盛り上がっていく。
お父さんは黒ラベルでますます顔を赤らめ、お母さんは笑顔で洗い物を片付け、お姉さんは狂ったようにシルバニアファミリー片手にコサックダンスを踊っていた。
決まって、見るテレビ番組は
※伝説の番組「8時だよ全員集合」の流れを汲み、当時同じ放送時間帯であったフジテレビの「オレたちひょうきん族」を終焉に追いやったとされる大人気バラエティ番組。その人気は社会現象となり、テレビゲームにもなった。トイレの男女マークを蹴っ飛ばすと、確かアイテムが出る仕様だった気がする。
お姉さんが踊り疲れ、お母さんが洗い物を終え、お父さんがウトウトしてきた番組の終盤。
ブラウン管に映るエンドロールを眺めていた時
僕が発した1つの質問が
土曜の夜空に広がる星空を切り裂き、長い長い沈黙をもたらした。
「加トちゃんって、カロトちゃんて書いてあるけどなんでカトちゃんなの?」
「おやまぁ、加トちゃんはカタカナじゃないの!加トちゃんをカロトちゃんと読むなんて、おかしいねぇ!」
お父さんとお母さんは、ひとしきり笑った後、真顔でこういった。
そういえば、加トちゃんの「カ」だけ、なんで漢字なの?
今日、先輩に一発ギャグ教えてくださいっていったら「加トちゃんぺ」されて、ふと脳裏によぎった記憶。